第6回 学生ライターが行く!ぐんまの就活・ぐんまでお仕事【2024グンマ・シューカツ・ネットワーク】
就職活動をしていると、IT業界は他の業界の成長を促すカギになっていることが多いと感じます。テクノロジーとITのかけ合わせによって新たなサービスも生まれ、私達の生活を支えています。IT業界は一般ユーザーとの関わりは少なく、わかりにくい面もあります。IT企業について就活生の目線で深堀りするため、「両毛システムズ」(本社・桐生市)に訪問し、胡子(えびす)さやかさん(管理統括本部人事部人事課)と大津祥樹さん(社会事業部エネルギーソリューション第3課)に取材しました。
(聞き手:高崎経済大学3年 丸山愛未さん)
―「サービス・ソリューション」についての質問です。幅広い分野でサービス提供をなされていますが、特に注力している分野はありますか?
胡子さん) 採用担当の立場でお答えすると、「全部」ですね。官公庁のお客様だけでなく、民間企業のお客様にも製品・サービスをご利用いただいており、官民どちらも幅広く手がけているのが、当社の特徴だと思っています。
取材担当の丸山愛未さん
―御社の強みや今日まで成長してこられた要因は何だと思いますか?
胡子さん) 設立から55年間培ってきた、お客さまの業界の業務ノウハウとITスキル、システム構築力を有する人材と組織力です。1つの分野にこだわらず、幅広い分野のお客様に対して製品・サービスを提供してきたことが、今日の会社の成長につながっています。例えば自治体向けにシステムを提供する場合、戸籍や税金等に関わる法令を理解していないと、活用いただけるソリューションは提案できません。様々な業界のお客さまの課題解決にチャレンジし続けてきたことが大きいと思います。
―IT会社というと、東京近郊に集積しているイメージがあります。なぜ群馬県に本社を置いているのでしょうか?
胡子さん) 当社は、親会社である自動車部品メーカー「ミツバ(本社:群馬県桐生市)」の電算部門を母体に、「地域密着・地元貢献」という基本理念のもと、地元経済界の協力により設立された企業だからです。また、群馬県は災害が少なく「海無し県」なので津波などの被害もありません。当社のデータセンターも群馬県にありますが、自然災害に強い立地というのは強みだと思っています。
桐生市に本社がある両毛システムズ
―会社として大切にしている考え方は何ですか?
胡子さん) IT業界は「人」が大切です。人的資本への投資として、社員の働きやすさに気を配っています。具体的には、業務に応じて勤務時間を柔軟に決められるフレックスタイム制を導入したり、1時間単位で有休を使えるようにしたり。仕事とプライベートの両立について、今後も推進し続けていきたいと思っています。
―御社は、「くるみん・えるぼし」に認定されています。男性の育児休業取得率は7割を超えているとのことでしたが、社内ではどのように取得推進をしたのでしょうか?
胡子さん) 7年くらい前から育休を取る男性が増え始め、1人また1人と実績ができて「男性も育休を取るのは当たり前」という雰囲気が醸成されました。育休を取りたくても「上司がどう思うか」「仲間に迷惑がかかる」という理由で言い出せないケースがあると思います。人事部からも管理職に「会社としても育休取得を推進したい」とサポートをお願いし、まずは必要性を理解してもらうことから始めました。
人事・教育部門を担当する胡子さやかさん
―新入社員研修の背景やお考えについて教えてください。
胡子さん) 当社では入社後3カ月の研修期間を設けています。その理由はIT未経験でも活躍してほしいという思いからです。入社後の研修を通して働きながら学んでいくことができます。当社には未経験からエンジニアを経験して役職に就いている人もたくさんいます。文系ならではの力を生かせる道もあるので、学生時代の経験や専攻にとらわれず、さまざまな人に活躍してもらえるよう基礎教育に力を入れています。
―新入社員研修でのプログラミング、難しかったですか?
大津さん)かなり難しかったです(笑)。プログラミングを覚えるという研修でなく、IT業界全般の仕事を知るための研修という意味合いが強いと思います。
胡子さん) 業務で他の社員にプログラミングを依頼する時、自分自身がその業務内容を理解していないと依頼することが難しいと思います。なので、部署やポジションにかかわらず、当社では社員全員にプログラミング研修を経験してもらっています。
大津祥樹さん(左)と人事部人事課担当課長の杵渕真年さん(中央)
―仕事のやりがい、モチベーションについて教えてください。
大津さん) 一緒に働く仲間と環境がモチベーションです。自分はガス会社が一般の家庭や企業などに請求する料金システムを担当しています。仕事内容が大変でも周りの先輩たちに聞けば助けてもらえるので、とても働きやすいと感じています。
胡子さん) 両毛システムズは自社で開発したシステムをお客さまに提供しています。直接聞き取ったユーザーの要望が、製品に反映されるのは、エンジニアにとってモチベーションや励みになると思います。
大津さんの言葉にあるように、当社は仕事の大半はチームで行います。さまざまな案件を協力して取り組んでいく中で、信頼関係が生まれ、より良い雰囲気で働くことができる、という声は社員からよく聞きますね。
―お二人はなぜ群馬に就職したのですか?
大津さん) 地元である新潟県にUターンすることも考えましたが、コロナ禍での就職活動でなかなか外に出づらい状況でした。当時は群馬に生活拠点があり、まだ群馬にいてもいいかなと考えたから、というのが正直なところです(笑)。
胡子さん) 群馬という土地柄を気に入って就職してくれる学生は一定数います。北海道や東北からきた人は、地元の気候の厳しさや都内の過密さと比較して、暮らすのに「ちょうどいい」と群馬を選んでくれます。電車を使って約2時間で都内に行けるという距離感もいいみたいです。
私自身も就職で都内を考えたこともありましたが、人の多さや満員電車がストレスだと思ってしまい…。人が多すぎず、生活環境の面で群馬県は居心地が良いと感じました。
―群馬での就職の決め手は「居心地の良さ」ですね。現在の就職先を選んだ決め手は何ですか。
大津さん) 大学の地域政策学部だったこともあり、就活の軸は「地方で頑張りたい」でした。都内就職の選択肢は最初からなかったですね。実は「地方に貢献する」という視点で公務員を考えたこともあります。でも、大学で地域の課題を学ぶ中で「人手不足」という言葉をいつも目にしていて。公務員として一人分の仕事をするより、IT業界で何人分もの仕事をこなすシステムをつくる方が、人手不足解消に貢献できるのではないかと考え、今の会社を選びました。
―IT=東京というイメージが強かったので、群馬県のIT会社で働くという選択肢がとても印象的だなと感じました。
胡子さん) 大津さんが人手不足の解消を挙げてくれましたが、地方のIT企業ならではの仕事、地域貢献の在り方があることを知ってほしいです。確かに東京の大手IT会社の方が、案件のスケールが大きいというケースはあると思います。でも同規模の会社であれば、業務内容は都内の会社とほとんど変わりません。技術の地域差もないし、求められるスキルにも差はありません。「IT企業=東京」と決めつけず、群馬県内ならではの特色ある企業を探すという選択肢を持ってもらえたらと思います。
―IT業界で働く上で大切なことを教えてください。
大津さん)「おしゃべり=会話力」です。お客さまや社内メンバーといかにコミュニケーションがとれるか、が一番大きいですね。顧客企業の社員と会話しながら業務内容を理解することが前提で、システムの構造を考えたり、提案したりすることができます。
自分は「相手の話を絶対にさえぎらないこと」を意識しています。言いたいことが分かった後もさえぎらずに最後まで聞く。社内で話す時でも必ず意識します。でも意外とできない人も多く、相手が本当に言いたかったこと、本人が考えながらまとめた大事な言葉を聞けないのはもったいないと思います。個人的には、話すよりも聞くことの方が難しいと感じます。
仕事をする上で大切にしていることを話してくれた大津さん
―群馬の就活生に伝えたいことはありますか?
胡子さん)新社会人にとってはどんな仕事も未経験です。企業を選ぶ時は、自身がやりたいこととマッチするか、という基準を大切にしてほしいと思います。そのためには「自分を知り、相手(企業)を知る」ことが大切。この「自分を知る」がうまくできていない学生さんが多い気がします。まわりに流されず「自分が譲れないこと」を見つけることでミスマッチを防ぐことができると思います。ぜひ自分のやりたいことと向き合ってみてください。
丸山さんも取材を通して新たな発見があった
取材を終えて
両毛システムズさん、ひいてはIT業界への先入観が大きく変化したと感じています。IT=東京周辺という価値観が先行していたので、良い意味で衝撃的でした。県内に存在する、特色豊かなIT企業が自分にとってより鮮明になる機会となりました。
胡子さんと大津さんへのインタビューを通して、IT業界に限らず、就職活動で「解像度」を上げるためには、まず自己を知ることが大切なのだと強く思いました。というのも、胡子さんは業界分析よりもます自己分析を徹底してほしいと就活生に向けてエールを送ってくださったからです。世間一般的な価値観に流されていない「本当の志望動機」は、業界分析ではなく自己分析を突き詰めることで得られる、とのことでした。就職活動に対する心持ちが前向きになったと同時に、ぐっと気が引き締まりました。また、大津さんには、社会人に必要なスキルとは「傾聴力」であることを教えてもらいました。大津さんが普段から意識しているのは、「人の話を最後まで遮らないこと」。私も、日々の会話から意識していこうと思います。
学びや気づきに溢れる、本当に良い時間になりました。取材にご協力くださった皆さん、ありがとうございました。
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