【県内企業を知る②】~人材育成の事例~
就職後、その企業でどのように成長していけるのか考えたことはありますか?
雇用・労働を取り巻く環境が変化する中、企業の未来をつくる人材の育成に力を入れる企業は増えています。
企業の人材育成を知ることで自分の将来像が見えてくるはずです。
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■専門家の視点 (社会保険労務士 薗田直子)
働く人だけではなく、お客様のニーズや価値観も多様化するなかで、『人を育て、組織の強みにつなげていくこと』を、「今まで以上に力を入れたい」と考える企業が増えています。
「働き方改革2.0」では、県内の先進企業の取組みからヒントを貰い、参加者同士(経営者・人事担当者)で語り合い、この先の時代に合った「自社らしい働き方」を探求する学びの場です。
第二回は、「人材育成・活用」について先進的な取組みをしている3社を、県内中小企業の人事労務コンサルティングをおこなう社会保険労務士の視点を交えてご紹介します。
■しののめ信用金庫(金融業)
群馬県富岡市富岡1123
https://www.shinonome-shinkin.jp/
『「認めあう」関係づくりからはじめる 人的資本経営』
- 人材育成を経営の最重要課題としている
- 人が育つ「風土」づくりに力を入れている
「信用金庫の仕事は、地域のお客様との信頼関係の上に成り立ちます。お客様に関心を持ち、どうお役にたてるか、自ら考え行動できる人材を育ててくことを経営の最重要課題としています」人材開発室室長 永井秀和氏から、同金庫の人材育成のベースにある考えと取組みについてお話いただきました。
同金庫では、お客様だけではなく庫内の職員同士がface to faceで信頼関係を築くことも大切にしています。新型コロナウィルス以降、職員同士の関係性が徐々に変化していることを庫内アンケートから読み取り、人材開発室主導で「認め合う」関係づくりの取組みを実施します。
周りの職員に興味関心を持ち、相手を認め合うことを目指した「Shinonome Smile Up Project」は、①あいさつ、②お客様へのおもてなし力向上、③感謝(サンクスカード)という3STEPで取り組みます。「女性営業職と男性上司の意見交換」は、男性・女性それぞれの立場で見えている景色を共有し、違いや共感を語り合う対話の場を、こちらも3STEPでおこないます。また、「互いを認め合い、可能性を引き出す」がテーマの8ヶ月間のマネジメント研修と並行し、職場で上司部下の1on1面談を行なっていきます。
どの取組みも小さなステップから始め、現場(職員)の声を拾っては軌道修正し、次のステップを踏んでいます。現場に耳を傾ける人材開発室の関わりそのものが、職員に関心をもつことを体現しています。
人材育成というと、専門知識やスキルの習得を思い浮かべるかもしれません。けれど、どんなに高い知識を持っていても、相手の役に立たなければ価値は生れません。顧客に価値を提供し、部下を育成するにも、「相手に関心をもち、相手を思いやる」という「人」としての関わりがベースになります。日々の行動や知識、スキルだけではなく、その土台となる人が育つ「風土」を丁寧に培っているのだと思いました。
■国定電機株式会社(再生エネルギー電気の工事、電気工事の設計施工メンテナンス)
群馬県伊勢崎市国定町二丁目1852-10
https://www.kuniden.net/
環境に配慮した再生エネルギー・省エネルギーのニーズが高まり、業務が拡大していく一方で、現場管理者の残業時間が増えることが同社の課題でした。常務取締役である渡辺紀子氏は、社員の結婚式で親御さんと会話から、「社員が健康で安心して過ごせる環境をつくらないと!」と残業削減に乗り出します。
受注は増えているのに、残業を減らす・・・実は結構大変なことです。社員の意識だけではなく、業務そのものの仕組から変えていかなければなりません。技術に誇りをもつ職人肌のメンバー多い現場では、当初こうした取り組み自体に抵抗感を示したといいます。技術部門のお困りことを事務部門がうまくサポートしながら、徐々に現場の理解を得ていきます。
「作業時間の見える化」をしたところ、現場で最も時間がかかっていたのは「書類作成業務」だったことがわかりました。この時間を短縮するために、事務部門のメンバーが作成サポートに入ります。また、現場ごとに原価や利益率といった生産性を分析することと、現場のIT化を同時並行で行っていきます。「見える化」した生産性を現場にフィードバックすることで、技術者自らが現場の改善やお客様への提案を行なうようになったといいます。
こうして、売り上げを下げることなく残業時間を減らし、得られた「利益」を社員に給与で還元する好循環をつくっていきます。
現場の「当たり前」を変化させていく、変化への抵抗感を超えたその先には、メンバーの成長が伴います。事務職が技術関連の業務をおこなうこと、新たなITツールを活用すること、部門を超えて業務の効率化について対話をすること、新しい取組みを実行するために「知」の体力を養いながら歩んでいます。現場で考える経験により、残業削減のプロセスが社員と組織の成長の機会となっているように思いました。
■群馬小型運送株式会社(運送業)
群馬県高崎市中大類町118-3
https://www.gku.group/
群馬小型運送株式会社 | ぐんま de 就活ナビゲーション (gunma-shukatsu-navi.jp)
「チャレンジ」の機会と 働きやすさ を追求する
- 社内公募制度により社内人材の活用
- 運送業における新卒採用と育成
人材確保が難しい運送業において、社内人材の活躍の機会を増やし育成することで、会社全体の人材力を高める取組みを同社の管理本部 川手愛子氏よりご紹介いただきました。
運送業は他の業界と比べ若年層が少なく高齢化が進んでいます。即戦力となる中途の経験者を採用するのが業界としての通例です。
そんな中、同社は新卒採用にも積極的に取り組みます。新卒採用と並行した取組みが「長期視点で育てる」ことです。資格取得に向けた費用の補助や学習時間の確保だけではなく、業務の振り返りとテーマに即した社内プレゼンの機会が年に2回あります。定期的に経験を振り返ることに加え、部署を超え社員同士がプレゼン資料をブラッシュアップする機会にもなっています。
また、本社から離れた拠点で、管理部門の職員募集になかなか応募がなく苦心していた時のことです。「外から応募がないのなら、仲間に募集してみよう!」と「社内公募制度」に乗り出します。結果、30代の大型ドライバーに就いていた職員を「管理者」へ職種変換することに成功しました。社内の人材を活用したことで、採用コストが削減されただけではなく、同社の経営理念や会社の方向性をはじめ、互いの社風や人柄がわかるため研修・教育期間も短縮しました。
今いる人材が最大限に発揮できる環境をつくろう!というのが同社の取組です。自分自身の成長は、日々の業務の中ではなかなか気づくことができません。あえて社内プレゼンの場を設け、自分の業務経験を振り返ることで、成長を実感し、次の一歩に踏み出しやすくなっていきます。また、社内公募制度は、社員として志を同じくする人材の仕事の幅を広げることで会社にとっても本人にとっても可能性を広げる機会になっています。チャレンジしやすい環境と機会をつくることで、人材力を高めているのだと思いました。
■学生ライターの視点 高崎経済大学2年 上野
群馬県新しい働き方導入支援事業 働き方改革2.0を、学生ライターとして見学させていただきました。これから就活を迎える学生の視点から、セミナーで新鮮に感じたことを前回に引き続きお届けします!
今回は金融業、建設業、物流業といった、顧客や元請け業者の都合に影響を受けやすいため改革が難しいといわれる業種の先行事例の共通点を「挑戦」と「浸透」の2つの視点からご紹介します!
根気強く挑戦する
人材活用における課題の最大の特徴は、効果がなかなか目に見えて現れないということです。まず長期的に取り組まなければならず、長期的に取り組んだからといってその取り組みに効果があるかどうかを判断するのは難しいため、どうしても腰が重くなるイメージがあります。課題克服までのストーリーを聞くと、もともと残業が多かったり、社員の健康に影響があったりとかなり切実な印象でした。
しかしながら、3社の取り組みへの姿勢は意外にも大胆かつ柔軟で、社内公募に取り組んだ群馬小型運送の川手様はこれについて『中小企業の強みはすぐ改革に踏み切れること』と頼もしいコメントをされていて、はっとさせられました。
社員ひとりひとりに取り組みを浸透させる
セミナー後半ではファシリテーターが登壇者にインタビューする形での深掘り解説トーク、参加者のグループワークを経て、登壇者と参加者の質疑応答が行われたのですが、特にこの後半戦が盛り上がっていました!
どのチームからも『今ある業務に加えてやるのが難しい』『社員を巻き込んでどう実践するか知りたい』という声が聞こえてきていて、それに対してしののめ信用金庫の永井様は『ひとりひとりに自分ごととしての意識を浸透させることが大切』とおっしゃっていました。個人的にこの言葉を聞いて、いつまでもお客さん気分でいてはいけない…!と激励されたような気持ちにもなりました。
また、国定電機の渡辺様は具体的な取り組みとして作業日報を活用した勤務状況の把握、見える化を行っており、『社員ひとりひとりには、残業がなくなって減る分の給料を、効率化による売上の増加で還元すると言って協力してもらっている』とおっしゃっていてこれにもなるほどと思いました。第2回は、全体を通して人材を活用する側の内情に迫った話やグループワークの議論の熱さに感銘を受けたと同時に、気づきの多かったセミナーでした。