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【県内企業を知る①】~採用戦略の事例~

コラム

人手不足が叫ばれる昨今、人材採用・定着に対する企業の工夫も様々。

採用戦略・採用後の仕組みづくりは働きやすさにも繋がる大切なポイント。

企業選びの参考にしてみるのも良いかもしれませんね!

 

【県内企業を知る】(全3回)では、働き方改革2.0セミナー内で登壇した好事例企業の取組を人事・労務の専門家である社会保険労務士が解説します!

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■専門家の視点 (社会保険労務士 金井雄吾)

働く環境が大きく変わった今、多くの企業で今の時代にあった「新しい働き方」を模索しています。「働き方改革20」では、県内の先進企業の取組みからヒントを貰い、参加者同士(経営者・人事担当者)で語り合い、この先の時代に合った「自社らしい働き方」を探求する学びの場です。

第一回は、「採用」について先進的な取組みをしている3社を、県内中小企業の人事労務コンサルティングをおこなう社会保険労務士の視点を交えてご紹介します。

 

■株式会社 ホテル松本楼(温泉旅館)

群馬県渋川市伊香保町伊香保164

http://www.matsumotoro.com/charm/

登壇者 ホテル松本楼 代表取締役 松本氏
  • 若手社員が行う求人活動、動画、エルダー制度等の活用など採用と定着の仕組みづくり
  • 応募者が300名を超え、定着率が向上

 

14年前、平均年齢が高く、休みが少ない、経験者に頼った中途採用など若手の採用ができる状況でなかった現状に危機感を覚え、登壇者、代表取締役 松本光男さんの改革が始まりました。
 
そして12年前、総料理長、料理部長、総支配人が次々と病気に倒れるという最大のピンチを迎えました。
これをきっかけにまず手を付けたのが「一人三役」でした。これまで一人一役で業務を行っていましたが、一人で複数の業務ができるようローテーションを行い、互いの業務を理解することで連携を取りやすくしました。しかし、なかなかうまくはいきません。反対する社員は次々と退職し、1週間で10名が退職していきました。さらに、その年に採用した新入社員は全員退職してしまいます。
 
とにかく新卒を雇用したい社長は、「我々中小企業には情熱しかない」と考えました。採用活動では若手社員にかかわってもらい、合同説明会では若手社員が会社説明を行い、学生と近い目線で不安や働くイメージを学生に伝えることに力を入れました。さらにエルダー制度として、入社から1年間は先輩社員が仕事だけでなく、生活面でも一緒に付き添ってフォローを行います。これらの取り組みは、新入社員が安心して仕事に取り組めるだけでなく、先輩社員にとってもモチベーションの向上、会社への愛着心を育むことができます。現在では応募者数も300名を超え、社員の平均年齢も58歳から30.5歳になりました。
 
参加企業からは、就活生に自社の魅力を知ってもらうには、情熱と安心して応募できる仕組みづくりが重要であることを認識していただきました。

 

■株式会社 群成舎(環境保全事業)

群馬県高崎市上並榎町129-1

https://gunseisya.co.jp/

株式会社群成舎 | ぐんま de 就活ナビゲーション (gunma-shukatsu-navi.jp)

登壇者 株式会社群成舎 イノベーション事業部 石田氏
  • 学生、地域、社会に対して「接点をもつ工夫」
  • 会社イメージ、社会的知名度の向上により新卒応募者の増加と親しみやすい企業へ

 

登壇者であるイノベーション事業部 石田環さんによると環境保全事業に対しては、きつい・汚い・危険といったイメージがあり、どうしても若手から敬遠される傾向にありました。この結果、従業員が高齢化し、これからの未来を創る若手の人材不足が大きな問題でした。
 
この問題を解決するためには、いかに学生、地域、社会に対して「接点をもつ工夫」をするかがポイントであると考えました。「自社の業務は、取引先のSDGsのうち12項目を達成するために繋がる事業である。」こと伝えるために、高崎を中心に世界へつながる企業理念をイラスト化し、視覚的に興味を持ってもらえるようにしました学生だけでなく、地域、社会に接点を持つ工夫としてカフェの営業やイベント出展を行っており、そこで学生や一般の方に会社を知っていただいて入社につながるケースもあります。
 
社内での接点、コミュニケーションをとる工夫もしています。部署の垣根を超えたグループディスカッション・読書会を行うことで新たなアイディアを生み出すことができ、3年前にはイノベーション事業部を立ち上げ、新たな事業にチャレンジしています。
 
認知度の向上について、発表者の石田環さんは「認知、理解、納得、共感」のプロセスが必要とお話しくださいました。とかく採用活動では「認知」の部分に目が行きがちですが、その向こうにある「理解、納得、共感ができるストーリーを会社が語ることができるのか」が大きなポイントになるのではないでしょうか。

 

■株式会社 インターゾーン(Webマーケティング・コールセンター事業、Saas事業)

群馬県高崎市緑町2-1-12

https://www.inter-zone.jp/

株式会社インターゾーン | ぐんま de 就活ナビゲーション (gunma-shukatsu-navi.jp)

株式会社インターゾーン 人材開発部 中村氏
  • 育成と働きがいの追求
  • 残業時間削減、有給消化率向上、多様な働き方ができる職場へ

 

採用活動に力を入れているにもかかわらず、その後の仕組みが不十分で採用した新卒者が退職してしまう企業が多数見られます。「若い人の気持ちは分からない」と思考停止してしまうのではなく、なぜ辞めてしまうのか?と原因を掘り下げて考えた企業があります。
 
株式会社インターゾーンでは、3年後離職率30%の壁を打ち破るために検討した結果、原因は3つになると考えました。働く時間が長く、家族との時間がとれない。育成の仕組みがなく独り立ちまでに時間がかかる。カルチャーや志向性のミスマッチ。
これらの問題を解決するため、様々な改善に取り組みました。まず目を付けたのが働く従業員のライフステージです。
 
子育て世代の社員が家族との時間を確保できるよう全社員の残業時間を20時間以内にする取り組みを行いました。週次で残業時間を計測し全社員にオープンにし、残業が多い社員とは面談を繰り返し業務の進め方や組織体制の変更などを行いました。その結果、平均業時間を15時間以内にすることができました。
 
続いて育成についてです。研修にはステップを設け「知る・覚える・できる」の過程を分けることで研修のゴールが明確になり本人も成長実感を得ることができます。理念研修では、理念は浸透させるものではなく、気づきを得るものという考えから参加する社員全員が自らの考えや体験を話す場とし、社員の心的安全性の確保することでカルチャーや志向性のミスマッチ解消を図りました。
 
こういった取り組みの結果、多様な人材、価値観の社員が働きやすい環境を作ることができ3年後の離職率を30%以下にすることができただけでなく、多様な人材が集まる会社に成長できました。
採用だけを強化するのではなく、ミスマッチをなくし働く環境を整えることの必要性を感じられる発表でした。

 

■学生ライターの視点(高崎経済大学地域政策学部2年 上野伊織)

「働き方を変えよう」というスローガンを掲げてはいるものの、「何から手をつけていいか模索中」「意識はあるものの行動改革はこれから」という群馬県内企業の人事労務担当者や経営者に向けて開催された群馬県新しい働き方導入支援事業 働き方改革2.0を、学生ライターとして参加させていただきました。これから就活を迎える学生の視点から、セミナーで新鮮に感じたことをそのままお届けします!

 

旅館業、廃棄物処理業、IT業と、異なる業種に携わる登壇者の方々は、『新卒社員が全員辞めてしまった(!)』『若者からの事業の印象がよくない・薄い』『入社後ミスマッチがおこってしまい三年後離職率が高い』という採用課題をそれぞれ抱えていたそう。

それらとどのように向き合い、どうやって具体的な行動に落とし込んだのか、今回は「接点」と「共有」の2つの視点から見えてきた3社の先行事例の共通点をご紹介します!

 

接点の広さ重視か、深さ重視か

自分にとっての採用活動のイメージは、とにかく広告や説明会でたくさんの学生に自社を知ってもらおうとするといった「接点の広さ」を重視するイメージが強く、中小企業にとってかなりハンデがあると思っていたのですが、3社の先行事例は「接点の深さ」にも目を向けていたように感じました。研修やインターンの場面でひとりひとりの考えや人生設計に注目し、そのニーズを細やかに拾う取り組みは松本楼の松本様曰く『中小企業には情熱しかないからこそ』とのこと。
もちろん、接点の深さも広さも同じくらい重要ですが、それについて群成舎の石田様は『認知→理解→納得→共感のプロセスを順番に踏むことが必要』とおっしゃっていました。
 
共有する姿勢の徹底
具体的な取り組みに落とし込むとき、3社とも心掛けていたのが社内・社外に向けて自社の魅力や価値を共有することでした。これについてインターゾーンの中村様は『今いる社員の心理的安全性を担保することが、これから入社する人へのアピールポイントにもなる』とおっしゃっていて、実際に月1回部門横断型の理念研修を行ったり、社員の日常を発信したりといった取り組みを行っていました。
 
初回から寒波の真っ只中でも参加者のみなさんの熱意が伝わってきて、かなり緊張していたのですがそれを忘れるくらい私も夢中になって参加させていただきました。
 

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